希少な大花廳は必見! 台中の「霧峰林家宮保第園區」に行ってみよう

台中の観光スポットでは「高美濕地」や「彩虹眷村」が有名ですが、個人的におすすめしたいのが「霧峰林家宮保第園區」。台湾では有名な富豪の末裔の邸宅でその一部が一般公開されています。

清朝末期から第二次世界大戦後にかけて林家の果たした功績は非常に興味深く、それらが記録された貴重な資料を見ることができます。

また、歴史的価値の高い建築物が多数あり、中でも安室奈美恵さんも出演した蔡依林(Jolin Tsai)のMV(ミュージックビデオ)「I'm Not Yours」の舞台となった「大花廳」は最大の見どころの1つです。

霧峰林家について

台湾五大家族の一つ

霧峰林家」は1746年に中国の福建漳州から台湾に渡ってきた「林石」の末裔です。現在の台中市の霧峰を拠点として財を成した富豪として知られ、その「霧峰林家」を含めた「基隆顏家」「板橋林家」「鹿港辜家」「高雄陳家」は、清王朝後期の日本統治時代から第二次大戦後の復興時期にかけて繁栄した「台湾五大家族」と呼ばれています。

霧峰林家宮保第園區

霧峰林家」は1837年に「頂厝」「下厝」という二つの家系に分かれ、それぞれ敷地の北側と南側に邸宅を構えます。1999年9月21日に発生した大地震(921大地震)によってその多くが倒壊しまたしが林家が費用を負担することで修復を行いました。

下厝」に含まれる建築物で現存するものには「草厝」「宮保第」「大花庁」「將軍府(二房厝)」があり、そのうち「宮保第」「大花廳」が「霧峰林家宮保第園區」として一般公開されています。

参観予約の方法

霧峰林家宮保第園區」は完全予約制となっていますので、事前に予約を済ませておく必要があります。予約方法については下記記事を参考にしてください。

「霧峰林家宮保第園區」への行き方

霧峰林家宮保第園區」の場所は台中市南部の霧峰區。台中駅からは8㎞ほど離れているのでバスかタクシーで行くことになります。

台中駅近くからバスで行く場合、以下のバス路線を利用することができます。ただし、台中駅のバス停(台中車站)でも路線によって乗り場が違うので注意しましょう。どちらかというと50番、59番がおすすめです。

路線 台中駅近くのバス停
50 台中車站(成功路口)
59 台中車站(成功路口)
107 台中車站(臺灣大道)

この日は50番のバスを利用して霧峰林家に行ってきました。

約30分ほどで最寄りのバス停「霧峰郵局(明台高中)」に到着です。

道路を渡って郵便局の左の路地(大同路)を進んでいきます。

最初の信号の交差点を左(民生路)へ。

しばらく進むと右手に「霧峰林家宮保第園區」が見えてきます。

霧峰林家宮保第園區」に到着です。

霧峰林家宮保第園區」の参観

入館の手続き

まずは「售票處(チケットカウンター)」で入館の手続きを行います。

カウンターで事前に予約している旨を伝えて入場料の支払いを行います。予約時の画面を印刷したものや、送られてきた予約確認メールなどを見せると手続きがスムーズに進むでしょう。

チケットの料金は以下のようになっています。

チケット種別 金額 備考
全票 250元 一般
優惠票 200元 65歲以上/台中市民/12歲以上の学生
學童票 125元 6歲以上12歲以下の学生(小学生)
免費票 0元 霧峰区民/6歲以下/身体障害者(介護者1名含む)
團體票 予約時に確認 20人以上の団体

手続きを終えるとこのように手の甲にスタンプを押されます。

参観は時間帯が決まっており(予約時に選択する)、各時間帯に予約した人のみ入館できることになっています。

このときは「9:30~」の時間帯を予約していました。予定より15分ほど早く到着して手続きを終え、入館の時間まで待っているつもりだったのですが受付のスタッフが「もう入ってもいいよ」と。

てっきり同じ時間帯を予約している参観者全員がいっせいに入館するものだと思っていたのでちょっと意外でした。

たぶんこのときは平日で参観者もそれほど多くなかったようなので、わりとアバウトになっていたのかもしれません。そのときどきの状況で対応も違ってくるのではないでしょうか。

また、手続き後に「霧峰林家宮保第園區」のマップと休憩所でお茶が無料で貰える「飲品兌換券」が貰えます。

マップには参観ルートが記載されているので参考にしましょう。ただし、中に入った後は退館しない限り自由に行き来してOKです。

「大戲台」のある「大花廳」へは電子ロックを解除して入るようになっています。解除に必要な暗証番号もこのマップに記載してくれます。

宮保第 第一進

まずはチケットカウンターの左手にある第一進(第一落)から。

入り口の扉に描かれた「文武門神六尊」の修復前、修復後の状態が確認できます。手前にある柱は太さが違うように見えますが、これはもう完全に作り替えたのでしょうか。

中央部分に描かれたているのは「武」の門神でしょうね。確かに修復前と比べるとかなり鮮やかになっていますね。

その両側には「文」の門神と思われる絵が描かれています。

第一進と第二進の間は中央が中庭のような空間になっていて四方を壁に囲まれています。こういった構造は中華式の建築の特徴なんだそうです。そして正面には第二進の入り口が見えますね。

宮保第 第二進

第二進も第一進と同じく林文察の子である林朝棟が1883年に完成させました。

入り口の上部に掲げられた匾額の「春秋又八千」という文字は書法家の「楊草仙」によって書かれたもので、林朝棟の婦人である楊水萍の81歳を祝して台中中華會館より贈られました。

第二進も修復前と修復後の写真が展示されています。修復前の写真では元の色がほとんど分からないのですが、ブルーだったというのはどうやって確認したんでしょうね?

建物内は部屋のようになっていますが、ここはかつて宮保第の主要な応接室だったそうです。

内部には壁画や書が展示されています。この内の4枚の書は、日清戦争の講和条約となる下関条約において清朝側の欽差大臣として調印を行った「李鴻章」によるものです。

下の写真の書(左から2枚目)に「李鴻章」の署名がありますね。

第二進を出ると再び周囲を建物に囲まれた広場に出ます。建物内に入ることはできないのですが扉や窓があるので部屋になっているのかな? そういえば中国の歴史物の映画とか観てると同じような造りの建築物がよく出てきますよね。

宮保第 第三進

五進からなる「宮保第」の中で最初に建てられたのが「中落」と呼ばれる「第三進」。1858年に林文察によって左右の護龍(一列の部屋群)とともに完成されました。

庇部分の彫刻も見事ですね。

入り口の左右にある4枚の扉にも壁画と彫刻が施されています。壁画はやや傷み具合が大きいでしょうか。

彫刻にはそれぞれ縁起が良いとされる動物や植物が彫られているんだそうです。ここには獅子? の姿が見えますね。

これは象でしょうか?

右隅に小鳥が彫られています。左側にも動物に見える彫刻がありますが、何でしょうね?

ここには鼬のような動物が見られます。

「第三進」には林家の家系図や「林文察」「林朝棟」「林祖密(資鏗)」といった主要な人物の解説が展示してあります。

父親が完成させた宮保第の「第三進」に続いて1883年に「第一進」「第二進」を完成させた「林文察」の子「林朝棟」について紹介しています。

「林朝棟」は父親の「林文察」と同じく清朝末期の軍人でした。1884年に勃発した清仏戦争に参戦、1888年に彰化で発生した施九緞の乱を鎮圧するなど功績を残しています。

上述の「林朝棟」の子である「林祖密(資鏗)」についての紹介。

霧峰林家の第7代当主でしたが、日清戦争の結果を受けた下関条約(1895年)によって台湾が日本に割譲された後、家長の地位を頂厝家系の「林献堂(林獻堂)」に譲り、日本国籍を放棄して中華民国国籍を取得しました。

後に孫文が結成した中華革命党に加入し、閩南軍の司令として護法戦争に参加しています。

上述のように軍人として名を残した末裔に対して、学術・文化面で貢献した人物も紹介されています。

林朝崧」とその子「林幼春」は日本統治時代の三大詩社の一つとして知られる「櫟社」創設時のメンバーとして名を連ねています。

宮保第 第四進

後落である「第四進」と「第五進」は1895年に完成しました。「第四進」は「第三進」と「第五進」の間にありましたが、1935年に台湾で発生した大地震(新竹・台中地震)によって被害を受け、その後の改修時に撤去されたそうです。

1999年の「921大地震」によって倒壊した建物を修復する際、建築当時の状態に関する資料が無かった為「第四進」は再現されておらず現存はしていません。

宮保第 第五進

「第四進」は現存しない為「第三進」を出ると「第五進」の姿が見えます。

尚「第五進」は立ち入り禁止となっているので建物の中へ入ることはできませんが、広場や軒下を歩いて参観することは可能です。

広場の中央あたりに煉瓦が敷かれ塀が築かれているのですが、この部分が「第四進」があった場所なのでしょうか?

「第一進」「第二進」「第三進」「第五進」ともに扉や窓に施された装飾はほんとに見事ですね。

休憩所(茶水兌換處)

「第五進」の「護龍」の一部を利用して休憩所が設けられています。

入館時に貰った「飲品兌換券」をスタッフに渡すとお茶を1杯無料でいただけます。

空いてる席に座ってお茶をいただきましょう。

ここは売店も兼ねているのでお土産を買うこともできますよ。

大花廳(大戯台)

休憩所を出たら最後の参観スポット「大花廳」へ向かいます。「大花廳」へは正面の門(「大花廳」の「第一進」)からではなく「大花廳」の「第一進」と「第二進」の間の側面から入ります。

こちらが「大花廳」の「第二進」の入り口。反対側には「第一進」があります。中央の扉は開閉できないようになっているので、端の扉より電子ロックを解除して中へ入ります。

マップに書かれた暗証番号を入力してロックを解除しましょう。

さて、いよいよ参観のクライマックス「大花廳」の内部へ。「大花廳」の建築は1890年に開始され1894年に完成しました。中央の大戲台は台湾で唯一現存する「福州式戲台」と呼ばれる福州様式の舞台。そして舞台を取り囲むように二階建ての観客席が設けられています。このような立派な施設を個人が所有しているのは驚きですね。こういった個人所有の劇場は中国大陸でもそれほど見られないんだそうです。

屋根にも細かい装飾が施されています。

「藻井」と呼ばれる舞台の天井に施された装飾もぜひ見て欲しいですね。八角形の天井の中央には牡丹の花の彫刻が見られます。牡丹には「花開富貴(運が開いて財を成す)」という意味があり 「大花廳」の名前の由来になっているんだそうです。

舞台の縁の装飾も見事。

舞台の下に甕(かめ)が置かれているのが分かるでしょうか。これは舞台上で発生した音が共鳴することでより鮮明に伝わるという音響効果があるんだとか。日本の能舞台でも同じような仕組みが見られるそうです。

舞台の裏側。観劇が行われる際、演者はここから舞台に上がります。

蔡依林(Jolin Tsai)のMV(ミュージックビデオ)「I'm Not Yours」でもここが特に印象的なシーンとして使われていましたね。

舞台を取り囲む客席。残念ながら2階に上がることはできませんでした。

1階の客席部分の様子。ここ(仕切りの手前)は座ってもよいみたいです。

舞台の正面にある貴賓席。

舞台の後方、両側にある「規矩門」。圓は「規」、方は「矩」、「無規矩不成方圓(規則なくば何事もうまく行かない)」と、ルールを守るよう呼びかける旨を表しているんだとか。

大花廳」には他にも様々な展示物や歴史資料があるのでぜひ見ていきましょう。

文創記念品店

出口付近にはお土産などを販売する売店があるので買い物を楽しむことができますよ。

参観終了

大花廳」の「第一進」が出口となっています。ここを出ると参観終了です。

お疲れさまでした。

スポット情報

住所 台中市霧峰區民生路26號
開放時間 (要予約)9:00~12:00、13:00~17:00
休日  
HP 霧峰林家宮保第園區
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